横浜トヨペット 中原店
H21年3月竣工 鉄骨造2階建 延床面積:1,551.15u(469坪)
1階平面図 建物形状が敷地に合せる形で三角形としている
スロープ途中の待合コーナー:1段目のスロープ踊り場に計画
スロープ:3段目の踊り場からショールームへアクセスする。
スロープ施工写真3:柱をできる限り少なくし、天井から吊る構造計画としている
JR南武線に並行して走る市道中原4号線、通称南部沿線道路が四角形の対角線を切り裂いたような三角形の敷地はこの種の用途には決して広くない1,031uで、建蔽率は角地の適用で70%である。自動車販売店のショールームは来客のアクセスの容易さから1階に設けることが大原則であるが、敷地や法的制限から2階に設けざるを得なかった。
来客に苦痛を与えず億劫にさせず、いかにスムーズに2階へ誘導するかが計画の大きなテーマとなった。
自動車を2階、屋上に上げるためのエレベーター、客用のエレベーター、法的な階段、事務所や客用便所等をどのようにプランニングするか、ジレンマの日が続いた。
論理学的には、複数解が矛盾してしまう「ジレンマ」、論理的に解けそうでいて不思議と解答が見つからない「パラドックス」に対して、唯一解が出せるものを「パズル」と定義することができる。この計画はパラドックスであったのか、果たしてパズルであったのか。
1階の主入り口からエレベーター乗り場の横に客用の斜路を設けた。法的な階段に代わる勾配8分の1のスロープである。床を支える桁は高さ180mmのチャンネルで、R階の梁から90mm×12mmのフラットバー2枚で吊る。揺れ、振動、歩行音の発生を完全に制する工夫がなされた。 道路からカーテンウォール越しに見るスロープはあたかも宙に浮いていて、昇降する客は外部の眺望と夢を提供する自動車へのアクセスに時を忘れる、そんな斜路を目指した。飛び跳ねて斜路を上がる子供を笑顔で追う親の表情に安堵する。
(深沢 義昭:建築ジャーナル 2011年 1月号より)